Case Study
事例紹介
富山県南砺市小坂地区
営農組合×ケーブル事業者で切り拓くスマート農業
~現場の課題をIoTで解決~
- 水田
- 施設
- その他
- LPWA
「見る・聞く・触る」のデジタル化で
誰でも成果が出せる農業を目指す。
南砺市では農家の高齢化が深刻となっており、年齢層の中心は60歳を超える。加えて営農組合が管理する水田は広範囲に及ぶため、水田管理の省力化・効率化は収益の維持という観点でも重要な課題となっていた。この現状を踏まえ、自身がお米の農業経営者でもある北村社長はスマート農業化についてとなみ衛星通信テレビの浅谷さんに相談。「水田の見える化」を進め、次世代の安定的な成果まで見越した環境整備に取り組んでいる。
富山県南砺市小坂地区
総面積 66,864 ha
耕地面積 7,240 ha
田 6,870 ha
畑 370 ha
総人口 47,937 人
総農家数 1,734
【作付上位品目】
米、野菜・果実
-
左:
小坂営農組合栽培管理部長
株式会社インターウェブ 代表取締役社長
北村 孝志 氏 -
左:
となみ衛星通信テレビ株式会社
執行役員 業務部長
浅谷 一寛 氏
取組みの経緯(地域の課題と情報通信環境整備の狙い)
- 南砺市小坂地区にある小坂営農組合では、管理する水田が広範囲に渡り、生産者の高齢化が進む中で見回りにかかる時間と負荷が課題となっており、稼げる魅力的な農業への転換を図らなくては担い手が居なくなるのではと危機感を持っていた。
- そこで、LPWAの基地局を設置し、水田センサーや給水ゲートを活用することで少ない人数で広範囲で行うことができる効率的な水管理を目指すとともに、データの可視化により効率的な栽培の実現を目指した。
- これにより、見回り等に係る人的労力の削減や移動にかかる燃料コストの削減、栽培の効率化を実現した。
整備した情報通信環境
設置機器
-
■LPWA基地局 10基
-
■水位センサー 約20台
水田管理用 -
■給水ゲート 約 20台
ゲートの開閉を遠隔操作 -
■ハウスセンサー 3台
育苗ハウスの温度・湿度・地中温度を計測
~段階的な事業計画と実体験により農家の理解を広げる~
小坂営農組合から水田の見える化について、となみ衛星通信テレビ株式会社(TST)にご相談いただいたことがきっかけでスマート農業の取組みがスタートした。営農組合は全体25ha、100枚の田んぼを5~6人で実質管理しているため、徹底した水管理が難しくなっていた。
まずは地域の営農組織の方々に情報通信基盤が必要であることを理解頂けるよう、実際に体験して効果を肌で感じることを重視して進めてきた。当初は現在LPWA(LoRa)ではなく、LPWA(LTE-M)に対応する水位センサーを2台設置し、見える化の実証をスタートさせたが、費用対効果に課題があったため、LPWA (LoRa)に切り替えて整備を行った。
計画を進める上で重要なことは?
事業については、段階的に実施することを重要視していました。初年度は水位の見える化のみを実施して、関係者のご理解をいただき、翌年度からは地域の要望を汲みながら、育苗ハウスの環境センサー設置や圃場内の水位センサー・給水ゲートの設置を行い、事業展開を実施しました。
~投資の意思決定は現状の作業コストの可視化から~
はじめに地域関係者のニーズをヒアリングし、要望と通信すべきエリアの特定を行ってから回線を選定し、工事を実施した。小坂営農組合の圃場が網羅できる位置に基地局を設置した。
TSTサービスエリア(南砺市、砺波市、小矢部市)全体で10基のLPWAの基地局を整備している。メンテナンスのしやすさから、同社が気軽に立ち入ることが出来る場所を中心に設置している。
センサー機器の費用は小坂営農組合が負担している。実証により見える化の効果が確認されたため、営農組合で予算化し機器はまとめて管理している。
これまでの経験で学んだことは?
スマート農業の前提条件として、どれだけのコストをかけられるのか、目安がないと話を進めることは難しいです。小坂営農組合では、25haの水管理作業にかかるコストを明確化しており、機械導入費との比較により、意思決定をスムーズに行うことができました。この実績に基づき、TSTでも横展開モデルが構築されつつあります。
~1つ1つの成功体験を横展開し、更なる活用拡大へ~
水田の水位センサーは、傾斜や表面の凹凸により、広い圃場全体の水位を正確に計測できる設置場所の特定が難しかったが、試行錯誤の結果ノウハウが蓄積されつつある。
4~5月は種苗ハウスの温度管理のための見回り頻度が高かったが、タブレットで遠隔のハウス内の状況がわかるため、負担軽減につながり、非常に喜ばれている。
TSTは地域のケーブルテレビ事業者として地域住民から相談されることが多く農業関係の成功事例の横展開が始まっている。今後は整備した通信基盤を活用し、防災やピンポイント天気予報など、農業に限らず地域の課題解決を進め事業を拡大する予定である。
活用した予算
LPWAの基地局やスマート農業機器は株式会社farmoより提供を頂き、TST(となみ衛星通信テレビ株式会社)にて設置を行った。同社として、これまでの住民向けサービスの他事業者や自治体向けのサービスを模索していたこともあり、地域貢献につながる新規事業の立ち上げや投資は進めやすかった。小坂営農組合の取組をモデルに横展開し事業化している。
センサー等の機器の費用は小坂営農組合で予算化し、管理している。
取組み体制
成功要因・工夫した点
- 生産者の課題が明確にあったことと、常日頃より地域に密着しているケーブル事業者(TST)が相談にのり、ソリューションを提示し、連携がスムーズであったことが成功要因の1つ。
- 営農組合が現状の作業コストをしっかり管理していたからこそ、機器導入後の費用対効果を示すことができ、周囲の理解も得やすかった。
- ケーブル事業者が新たな事業展開を目指しLPWAを整備し、農業や防災など多様なニーズに対しサービスを展開することで事業化している。
担当者コメント
機械任せ、人任せにせず、できることは自分で動き、自分たちの課題解決にとって必要なシステムは何かを、自分たちで考えることが大事です。(北村 孝志 氏)
情報通信基盤や取得データは、今後はウェルビーイングなシビックデータとして活用できるよう、データを集めながら地域に還元していきたい。情報通信整備を通じて町を豊かにする地域のケーブル事業者でありたい。です。情報通信整備を通じて町を豊かにする、地域のケーブル事業者でありたいと思います。(浅谷 一寛 氏)