Case Study

事例紹介

北海道岩見沢市

スマートアグリシティを目指して
~スマート農業などデジタル活用による地域DXの推進~

  • 自動機
  • 用排水
  • 水田
  • 施設
  • その他
  • BWA
  • LPWA
  • ローカル5G

農業のインフラ改善を起点に
さらなる地域の経済発展を目指す。

1997年より全国に先駆けてICT環境の整備を推し進めてきた岩見沢市。重要な地域課題として、基幹産業である農業などの維持や経済の発展を掲げるなか、近年ますます進む生産人口の減少が問題となっていた。この状況からスマート農業の実装は必要不可欠とし、さらなるICT環境の強化を図る岩見沢市は、先々まで見通した市民生活の向上を目標に新たなチャレンジを続けている。

北海道岩見沢市

総面積: 48,102ha
耕地面積:19,700ha
 田:16,400ha
 畑:3,390ha
総人口:79,306人
総農家数:1,020戸
作付上位品目:米、野菜、豆

  • 情報政策部長
    黄瀬 信之

取組みの経緯(地域の課題と情報通信環境整備の狙い)

  • 岩見沢市の基幹産業は農業であり、高齢化や農家戸数の減少に伴う1戸あたりの経営耕地面積拡大など持続性確保に大きな課題を抱えていた。
  • 情報通信技術活用による「市民生活の質の向上」と「地域経済の活性化」をテーマに早くから自営光ファイバ網などの基盤整備や様々な利活用機能の社会実装を進めてきたが、更に農業分野へのIoT活用を検討するため、スマート農業に関する生産者の研究会を設立した。
  • これにより、現場ニーズを基に、気象観測データに基づく農作業の最適化をはじめトラクターの操舵アシストや自動走行による労働時間の削減・省力化・効率化を実現し、更にレベル3遠隔監視制御の社会実装を目指している。

整備した情報通信環境

設置機器

  • 光ファイバー
  • RTK基地局 4基
  • 地域BWA基地局 21基
  • LPWA基地局 4基
    (802.11ah:3、LoRa:1)
  • ローカル5G基地局 2基
  • 4Kカメラ
    ・圃場データの取得、解析
    ・自動運転トラクターの複数台走行、圃場間移動

~ビジョンからのバックキャストで計画する~

基幹産業である第一次産業の維持や経済の発展は重要な地域課題である。地域全体の農業生産人口が減少するなか持続性を確保するためにスマート農業の実装は必要不可欠である。2018年からスタートした第6次岩見沢市総合計画のビジョンのもと、令和2年に「第2次岩見沢市総合戦略」において4つの重点項目と目標を定め「農業の生産性の向上」に取り組んでいる。
行政と生産者が目的やビジョンを共有することによってバックキャスティングで進んだ。生産者とJA、行政が一緒に進んでいる。現場は農家しかわからないので、ニーズを把握し最適化に向けて議論してきた。

計画を進める上で重要なことは?

地域戦略として市長のトップダウンでスタートしましたが、もちろん行政だけで動かせるものではないので、必ず生産者の声を聞くようにしています。また、生産者の声が少数では行政を動かすことが難しいため、研究会を作ってもらいました。7人からスタートした「いわみざわ地域ICT(GNSS等)農業利活用研究会」は、現在230名が登録するスマート農業推進の中心的存在です。生産者との議論の中でわからないことは大学や企業に聞いたり、一緒に勉強したり、地域戦略としてスマート農業が必要不可欠かどうかなど、議論を重ねています。「岩見沢市スマートアグリシティ実証コンソーシアム」組成もその取組の一環です。

~ニーズに合わせた通信技術の組み合わせ~

岩見沢市では全国に先駆けて光ファイバ、BWA、ローカル5Gなどの整備を行ってきた。地域環境や経済性に配慮し、利用内容に応じて通信技術を組み合わせた設計を心がけてきた。
単一の用途、例えば農業分野だけにこだわらず、行政として必要な課題を幅広くカバーする通信エリア設計をしている。
設計や工事の仕様作成は行政が担当している。CATV事業者が地域におらず、第3セクター(はまなすインフォメーション)を設置し、地域BWAサービスの提供等導入後の運用部分を担当している。

これまでの経験で学んだことは?

特に工事段階で課題を感じたことはないですが、事前に地域の現状をよく知り、調査を行い、基本設計までしっかりと実施すること、適切な通信技術を選択して進めることの重要性を改めて認識しました。

~農業のみならず、行政の様々な場面にICTが浸透~

市内全域で整備された光ファイバ網をベースとし、農業分野では気象情報システムを活用した出穂期や病害虫予測、RTK-GNSSによるガイダンスシステム、キャリア5G/ローカル5Gによる無人走行システムなどに活用が進んでいる。
ローカル5Gは遠隔技術指導や教育、医療、MaaSなどにも応用している。
特定の利用目的だけでは通信インフラの維持・運用は困難であり、生活や防災など複合的、多面的な利用を最大限に考慮した運用を行っている。
住民を含め目的を共有・共感する産学官が連携しアイディアを具体化する体制を構築してきている。

活用した予算

第2期岩見沢市総合戦略関連予算として「農林業の振興」に関する予算を組んでいるほか「地域情報化の推進」に向けた予算措置を行っている。
国の補助事業を活用することも重要。農林水産省やデジタル田園都市国家構想推進交付金など、組み合わせて活用できるものもあり、リサーチしながら最適な補助事業を選ぶことが大事。

取組み体制

成功要因・工夫した点

  • 決して自治体が勝手に計画をするようなことはしない。生産者の課題を可視化するお手伝いをするのが我々の役割であり、意見を聞き使える技術を一緒に勉強し、設計に繋げていく。一緒にやっていく姿勢が重要。
  • どうしたらペイするのかといった経済的な分析も重要。大学と連携し農業経済を活用し生産や流通・マーケティングなどエビデンスを取りながら取り組んでいる。

担当者コメント

我々自治体も生産者も「次はこれをやらなければ」と常に目的意識、チャレンジ精神を持っています。これまで自動化やデータ活用、AIと取り組んできましたが、今後は土壌やマーケティングに取り組むべきという声も出ているので、常にチャレンジし続けていきたいです。