Case Study

事例紹介

岩木川土地改良区(青森県弘前市)

土地改良区合併を機に、地域一帯に遠隔制御・監視システムを構築し、効率的で安全な水管理体制を実現

  • 用水
  • 河川
  • 光ファイバ

迅速な水管理を安全に、効率的に。
合併を経て実現させる持続可能なICTの整備。

リンゴと水稲の複合経営が盛んな岩木川土地改良区は、元は8つの土地改良区から成っており、各々がその地域環境ならではの課題に悩まされていた。例えば旧杭止堰(くいとぜき)土地改良区では、組合員への配水調整は人力による目分量。現地への移動、配水の調整、要望に応じた再調整など、多くの時間と労力がかかっていた。さらに、幹線用水路が山沿いを経て市街地を通っているため、豪雨による洪水被害やゴミの流入による溢水被害もたびたび起きていた。悪天候時の操作は危険を伴うこともあり、遠隔での監視と操作による安全で迅速な対応の必要性を感じて事業への取組を開始した。合併時には市と改良区で異なっていたシステムを統合化し、通信環境も一新。今後はさらなる遠隔監視システムの拡充で、より広範囲な地域の効率的な管理を目指している。

岩木川土地改良区(青森県弘前市)

受益面積: 2,850 ha
組合員数:4,047 人
【作付上位品目】 
水稲、りんご、メロン、
スイカ、ねぎ

  • 青森県
    中南農林水産事務所
    木村 康祐
  • 岩木川土地改良区
    事務局長
    田澤 昭次郎

取組みの経緯(地域の課題と情報通信環境整備の狙い)

  • 岩木川から農業用水を取水している旧杭止堰(くいとぜき)土地改良区では、目視での機側操作による配水管理を行っていたが、組合員からの要望にこまめに対応する必要があるため、管理者の負担となっていた。また、集中豪雨の増加や除塵体制の不備による住宅地周辺での溢水被害や操作員の安全確保も課題となっていた。
  • 8つの土地改良区が合併して岩木川土地改良区が設立したことを契機に、別々のシステムで運用していた市と土地改良区の水管理システムを統合することについて、青森県・弘前市・岩木川土地改良区が協議を開始。3箇所の遠隔制御システムと6箇所の監視カメラ及び水位観測システムの整備により、モバイル端末による遠隔監視が可能な中央制御監視システムを構築した。
  • これにより地域一帯においてリアルタイム映像に基づく遠隔監視制御が可能となったことにより、配水作業の効率化、集中豪雨時における溢水被害の防止と職員や操作員の安全確保が図られた。

整備した情報通信環境

設置機器

  • 中央制御監視システム
  • 遠隔監視システム
  • 遠隔制御システム
  • 水位観測システム

土地改良区の合併に伴い地域の水管理システムを統合、一元管理できる計画を策定

8つの土地改良区の合併に伴い、既存施設のシステムの拡張・更新について青森県・弘前市・岩木川土地改良区が連携し、令和3年度に計画策定事業を開始した。土地改良区から受けた要望を起点に用水管理の将来構想や課題を整理し、整備の目的や方針が明確化された整備計画案を作成した。
弘前市と旧杭止堰土地改良区のシステムを統合し、リンゴの盗難やゴミの不法投棄対策としての監視カメラも含めて、地域一帯の水利施設を遠隔制御・監視できるシステムを計画した。
一体的な整備に必要な費用は、施設の所有者や管理責任を明確化したうえで、それぞれが担当施設の費用を負担する形で調整・合意した。

計画を進める上で重要なことは?

施設の所有者に応じて個別にシステムを整備するのではなく、現場を担う土地改良区が主体的に要望を出し、地域の用水管理を一体的に運用できることや、モバイル端末から現場の状況が確認できることなど、地域用水管理の「あるべき姿」を関係者で共有して計画を策定した。

オンプレミス型からクラウド型への移行により利便性の向上と災害時のリスク軽減を図る

当初は土地改良区内にサーバーを設置するオンプレミス型を想定していたが、将来のハードウェアやソフトウェア等の更新や保守の容易性や災害時のリスク軽減を考慮し、クラウド型のデータ管理・運用方式を採用した。当時クラウド型は主流ではなく大手企業にも構築を断られる状況が続いたが、他県で実績がある企業との幸運な出会いにより整備が進んだ。
整備は令和4年度から2か年で実施した。関連施設が多いため、河川占有手続きなど各所との調整に時間を要した。また、コロナ禍での整備であったため、機器納入が不安定となり導入可否が不透明な状況が続いたが、通信業者や施工業者と調整を重ね資機材の確保に尽力した。

これまでの経験で学んだことは?

端末、OSの更新や回線サービスの終了によりシステム全体の刷新を迫られた経験を踏まえ、自らもICTの技術動向を学び、先を見据えたシステム構築の重要性を理解したことで、特定のOSや技術に左右されにくいクラウド型システムの導入を実現することができた。

ICTを活用した水利施設管理の高度化により、省力化・地域の安全性向上を実現

平成27年度に整備した遠隔制御可能な中央制御監視システムに対し、令和4年のクラウド型への移行によりスマートフォンやタブレットから即座に状況把握ができるようになった。ゲート操作や水位確認を出先でも行うことができ現地に出向く労力が大幅に削減されている。またシステムをクラウド型に移行したため、サーバーの異常時にも遠隔で素早く保守対応をしてもらえるようになった。
水位データや現場の画像を見ながらこまめに対応できる水管理体制が整備され、組合員から「約束通り水が届いた」といった喜びの声が寄せられている。除塵などの課題にもリアルタイムで対応可能となり青森県とは災害防止の一環で情報を共有していることから地域全体の安心感が高まった。
今後は太陽光発電を活用した簡易型システムの導入や遠隔操作機能の拡充を進め、広範囲な地域を持続的かつ柔軟に管理していく方針である。

【財源】

計画策定事業
・農山漁村振興交付金(情報通信環境整備対策)
施設整備事業
・農山漁村振興交付金(情報通信環境整備対策)
・青森県 農業水利施設保全合理化事業
・弘前市 農業水利施設保全合理化事業
・岩木川土地改良区 農業水利施設保全合理化事業

成功要因・工夫した点

  • 青森県・弘前市・岩木川土地改良区の三者が協力して調整を進め、操作管理者である岩木川土地改良区のニーズと課題を整理することで、個別整備ではなくシステムを統合して一体的に整備する方針や土地改良区の費用負担の合意が得られたこと。
  • 従来のオンプレミス型からクラウド型へ移行したいという土地改良区の要望が明確化されており、対応可能な業者と出会えたこと。

担当者コメント

弘前市と土地改良区の管理システムが絡み、地元負担の調整には何度も協議を要した。管理責任を明確化し、各者が保有する施設の費用を負担する形で合意が得られたため、地域一体的な施設整備が実現した。
(青森県中南農林水産事務所 木村 康祐 氏)
地域全体の水管理を、モバイル端末から監視・制御できることは大きな進歩。大雨時にすぐ対応できるため、非常に安心感がある。クラウド型に移行し、遠隔で確認・対応ができ、運用面の効率化が進んだ。
(岩木川土地改良区事務局長 田澤 昭次郎 氏)