Case Study

事例紹介

北海道岩見沢市

積み上げたノウハウと通信規格のベストミックスにより地域一帯の水位監視体制を実現

  • 排水
  • 排水機場
  • LPWA

負担とリスクの軽減で“安心”をつくる。
地域の経済発展を目指した農業のICT強化。

1993年より自営の光ファイバ網を整備するなど、全国に先駆けてICT活用に取り組んできた岩見沢市。基幹産業である農業においても、これまでに気象観測データの活用やトラクターの自動走行などを実現してきたが、近年では農業水利施設の維持管理に係る負担が課題となっていた。具体的には豪雨等の災害時、特に夜間に行う施設の現地確認には事故の危険が伴うこと、そして冬には豪雪地帯ゆえの雪の影響で、雪解け水による突発的な洪水を警戒した巡回に多大な時間と労力がかかることから、管理の省力化や高度化が必要とされていた。そこで岩見沢市は、特に優先度の高い排水機場と用排水路に水位計とカメラの設置を実施。負担とリスクの軽減を実現しながら、今後は農業以外の利活用も視野に入れた検討を進めている。

北海道岩見沢市

総面積: 48,102ha
耕地面積:19,700ha
総人口:74,204 人
総農家数:881戸
【作付上位品目】
米、小麦、たまねぎ、はくさい

  • 岩見沢市企画財政部 情報政策課
    情報化推進係 係長
    山﨑 拓也
  • 岩見沢市農政部農業基盤整備課
    課長
    斎藤 貴視

取組みの経緯(地域の課題と情報通信環境整備の狙い)

  • 岩見沢市では、将来的な人口減少や高齢化社会を見据え、全国に先駆けて自営光ファイバー網を整備し、その後も、RTK-GNSS基地局や地域BWA網、LPWA網の整備など、ICT・デジタル基盤の利活用を地域戦略として位置づけて積極的な取組を重ねてきた。
  • 広い農業地帯に分散する排水機場の監視システムのクラウド化を段階的に進める中、令和4年度から令和6年度にかけて、既設の地域BWA網とLPWA網を活用し、排水機場4箇所と農業用排水路18箇所に水位センサーとカメラを設置して、水路全体を一体的に把握できる監視体制を構築した。
  • これにより、役所職員・排水機場に関係する農家・周辺自治体・土地改良区などの関係者が、パソコンやスマートフォンから素早く状況確認ができるようになり、豪雨時や融雪期には広域で長時間行われていた現地確認の回数が減少し、作業負荷や危険リスクの大幅な軽減と、地元住民の心理的な安心感が高まった。

整備した情報通信環境

設置機器

  • LPWA親局装置 8箇所
    (水位観測装置中継装置)

  • 水位観測装置・カメラ監視装置 18箇所
  • <既設の機器>
    ・光ファイバー
    ・RTK-GNSS基地局 4基地局
    ・地域BWA基地局 21基
    ・LPWA基地局 4基
    (802.11ah:3、LoRa:1)

クラウド化による情報連携で総合的な水利施設監視体制を目指す

ICT・デジタル基盤の利活用を地域戦略として位置づけて取組を重ねている岩見沢市では、情報政策課と農業基盤整備課が連携して、排水機場の監視システムのクラウド化を進めてきた。遠隔監視による省力化効果を実感する中で、基幹産業である農業の持続性、防災機能の強化、生活の質の向上までを視野に入れた総合的な農業農村情報通信環境整備計画を令和3年度に策定した。
同計画においては、将来的な排水機場監視装置および排水路水位計について、工法比較や設置方法の検討を行うとともに、事業地区における情報通信環境および農業農村インフラの現況・課題を整理。あわせて関係者へのニーズ調査を実施し、その結果を踏まえて施設仕様や配置計画を検討した。
なお、施設仕様や配置計画の検討に際しては、補助事業は活用せず、職員間で話し合いながら進めた。

計画を進める上で重要なことは?

排水機場設備の更新周期等を踏まえ、長期的な費用対効果を重視して計画を立案した。計画は人件費削減を主目的とするのではなく、防災性と地域住民の生活の質向上を優先する方針を共有し、初期投資を将来価値につなげる投資的視点で、関係部局の合意形成を図り推進した。

通信規格のベストミックスによる運用体制を構築

令和4年度から令和6年度にかけて4箇所の排水機場と18箇所の農業用排水路に水位監視装置を順次設置し、市内全ての排水機場の水位が1つの画面で監視できるようになった。
設置場所や設置機器の判断は各地区の担当者や地元の方々から話を伺い「このポイントは何かあったら必ず見に行かなければならない」という場所を中心に選んだ。行政だけの判断ではなく長年の経験を持つ地元の方々の話に耳を傾け、夏場と冬場に問題が起きやすい場所の情報を吸い上げた。
水位データは通信容量が小さいためLPWA網を整備し、複数の観測地点のデータを1か所の地域BWAゲートウェイに集約することで通信コストを削減している。カメラは水位センサーのバックアップと視覚確認を目的に設置し既設の地域BWA網を活用しているため、追加の通信費は発生していない。

これまでの経験で学んだことは?

自営光ファイバー網の運用、地域BWA、LPWA、Wi-Fi HaLow®など複数の通信方式の活用、システムのクラウド化など、ICTに積極的な取組を進める中で職員だけでなく市民にもノウハウが次第に蓄積しており、低コストな計画づくりや通信の多目的活用、スムーズな合意形成につながっている。

地域一体となった情報共有により、負担軽減と地域住民の安心感を実現

リアルタイムで水路の状況や水位の変化を確認すると同時に、排水機場の動作状況も把握できるようになったため、以前は電話やメールで混乱していた連携が阿吽の呼吸でスムーズに進むようになり、地域住民の安心感にも繋がっている。
維持管理は民間業者に委託し、故障等にも迅速に対応できる体制を構築した。排水機場の操作は従来通り地元農家に依頼しているが、負担軽減と情報収集の効率化が進み高く評価されている。
今後は、流域治水上で重要な排水樋門や、浸水履歴がある排水機場のゲート操作だけでも自動化したいと考えている。

【財源】

計画策定事業
・農山漁村振興交付金(情報通信環境整備対策)
施設整備事業
・農山漁村振興交付金(情報通信環境整備対策)
・防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債
・用排水施設維持管理事業

成功要因・工夫した点

  • カメラには地域BWA、水位データはLPWAと用途に最適な通信方式を組み合わせ、通信規格のベストミックスによる運用体制が構築されていること。
  • 通信エリアとしてはカバーしていても、地形や建物の影響で電波伝搬に影響が出るため、設置個所ごとにこまめに電波調査を行ったこと。

担当者コメント

ICTを特定の目的に限って使うのではなく、市民や自治体業務の向上といった観点で様々に利用できるシーンを私たちが見つけながら今後も事業を進めて行きたい。
(岩見沢市企画財政部 情報政策課情報化推進係 係長 山﨑 拓也 氏)

命や財産を守ることはもちろん、地域の方々の暮らしのために何を思いやって行動するか、その思いやりの表現が本事業の本質だと思う。
(岩見沢市農政部 農業基盤整備課 課長 斎藤 貴視 氏)